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犬の肥満細胞腫
犬の肥満細胞腫は、皮膚や皮下組織に発生することが多く、しこりの見た目や触り心地はさまざまです。小さくゆっくり大きくなるものもあれば、急速に増大し、赤みや潰瘍を伴うものもあります。脂肪腫のように柔らかく触れることもあり、見た目だけで良性・悪性を判断することは困難です。
発生しやすい犬種として、ボクサー、ボストン・テリア、パグ、ブルドッグ、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、コッカー・スパニエル、シュナウザー、ビーグル、シャーペイなどが報告されています。中高齢の犬で多くみられますが、若齢犬でも発生することがあります。
診断
肥満細胞腫は、多くの場合、細い針で細胞を採取した後、細胞診(顕微鏡で観察)を行うことで診断できます。細胞の中に特徴的な顆粒が認められるため、比較的診断しやすい腫瘍です。
ただし、悪性度の判断や治療方針の決定には、手術で摘出した組織、または生検組織を用いた病理検査が重要です。病理検査では、腫瘍のグレード、細胞分裂の多さ、切除縁に腫瘍細胞が残っていないかなどを評価します。
また、腫瘍の悪性度が高い場合や、リンパ節転移が疑われる場合には、リンパ節の細胞診、腹部超音波検査、胸部レントゲン検査などを行い、転移の有無を確認します。
予後に関わる因子
犬の肥満細胞腫では、以下のような要素が治療方針や予後に関係します。
* 病理組織学的グレード
* 細胞分裂指数
* 腫瘍の発生部位
* 腫瘍の大きさや増大速度
* 潰瘍や赤み、浮腫の有無
* リンパ節や内臓への転移の有無
* 完全切除が可能かどうか
* KIT遺伝子変異などの分子学的異常
特に、病理組織学的グレードは最も重要な予後因子の一つです。低グレードの肥満細胞腫では、適切な外科切除により良好な経過が期待できることが多い一方、高グレードの肥満細胞腫では、局所再発や転移のリスクが高く、外科治療に加えて抗がん剤治療や分子標的薬などを検討する必要があります。
治療の流れ
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治療
治療の中心は外科的切除です。腫瘍が皮膚に限局しており、十分な範囲で切除できる場合には、手術のみで長期的なコントロールが期待できることがあります。
一方で、腫瘍の発生部位によっては十分な切除範囲を確保することが難しい場合があります。そのような場合には、放射線治療、抗がん剤治療、分子標的薬などを組み合わせて治療を行います。
高グレード、リンパ節転移を伴う症例、再発症例、完全切除が難しい症例では、ビンブラスチン、ロムスチンなどの抗がん剤治療や、トセラニブなどの分子標的薬が選択肢となります。
また、肥満細胞腫ではヒスタミンなどの物質が放出されることで胃潰瘍や嘔吐、下痢などを起こすことがあるため、必要に応じて抗ヒスタミン薬、胃酸分泌抑制薬、胃粘膜保護薬などを併用します。
□犬の肥満細胞腫の予後(MST:生存期間中央値)
低グレード肥満細胞腫
* 適切な外科切除ができた場合、80〜90%の症例で長期生存が期待されます。
* 報告には、明確なMSTが算出されないほど長期生存する症例も多く含まれます。
中間グレード肥満細胞腫
* 約75%の症例で、完全切除後に長期生存が期待されます。
* ただし、一部では再発や転移を起こすため、追加治療が必要になることがあります。
高グレード(低分化)肥満細胞腫
* 転移率は55〜96%と報告されています。
* 多くの症例が1年以内に腫瘍関連死するとされています。
* Mitotic index(M I:核分裂数)が高い症例では特に予後が悪くなります。
MI が5未満 → MST 80 ヶ月
MI が5以上 → MST 3 ヶ月
□予後因子別のMST
①Mitotic Index(核分裂数)
MI が5未満 → MST 80 ヶ月
MI が5以上 → MST 3 ヶ月
と大きな差が報告されています。
②リンパ節転移がある場合
高グレード肥満細胞腫において、
* リンパ節転移なし:MST 約503日
* リンパ節転移あり:MST 約194日
とされています。
さらに、
* 転移リンパ節を治療した場合:MST 約240日
* 未治療の場合:MST 約42日
と報告されています。
分子標的薬(トセラニブ/Palladia)
再発例・転移例に対する分子標的薬治療では、
* 奏効期間中央値:約12週
* 腫瘍進行までの期間中央値:約18週
と記載されています。
*術後放射線治療
低〜中間グレードの症例において、不完全切除後に放射線治療を行った場合の治療成績は、以下のように報告されています。
* 2年局所制御率:85〜95%
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猫の肥満細胞腫
猫の肥満細胞腫は、犬とは異なり、主に以下の3つのタイプに分けられます。
- 皮膚型肥満細胞腫
- 脾臓・内臓型肥満細胞腫
- 腸管型肥満細胞腫
皮膚型は頭部や頸部に発生することが多く、多くは比較的良性の挙動を示します。外科切除によって良好にコントロールできる症例も多く認められます。
一方、脾臓や腸管に発生する肥満細胞腫では、嘔吐、食欲不振、体重減少、下痢などの全身症状を伴うことがあり、転移を認める場合もあります。特に腸管型では診断時に進行していることもあり、予後は慎重に判断する必要があります。
猫の肥満細胞腫も、外科治療が基本となりますが、病変の部位や進行度によっては抗がん剤治療や分子標的薬を検討することがあります。
予後
□猫の肥満細胞腫のMST(生存期間中央値)
皮膚型
* 多くは比較的良好
* 完全切除で長期生存可能
脾臓型
* 脾臓摘出後のMST:約12〜19ヶ月
腸管型
* MST:約1.5年
* ただし転移例では予後が悪い場合が多い
まとめ
肥満細胞腫は、見た目だけでは悪性度を判断できない腫瘍です。小さなしこりであっても悪性度が高いことや、転移を起こす場合があります。
そのため、皮膚や皮下にしこりを見つけた場合には、早期に細胞診を行い、肥満細胞腫かどうかを確認することが重要です。診断後は、腫瘍のグレードや発生部位、転移の有無を評価したうえで、外科手術、放射線治療、抗がん剤治療、分子標的薬などを組み合わせ、症例ごとに最適な治療方針を検討します。
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